沿革

救世軍自省館は、生活保護法による救護施設として1977(昭和52)年2月1日認可開設されました。

救世軍は、創業以来アルコール問題に取り組んできていました。その一端として、1969(昭和44)年、中央区月島に「救世軍自助館」を設立し単身アルコール依存症者の宿泊事業を開始しました。その後、東京都もアルコール依存症者の専門的処遇の必要性を認め、救世軍にその事業を行うことが託され、1976(昭和51)年救世軍自省館の建物は完成しました。しかしながら、地域住民からの反対運動が持ち上がったため、その解決に時間を要し、翌1977(昭和52)年2月の開設となりました。

開設当初から5年間位は、日本で初めてであり、唯一であるアルコール依存症者のリハビリを行う中間施設として、試行錯誤を重ねながらプログラムを展開し、利用者のアルコール依存症からの回復の支援を行っていました。

最初は自助グループとして断酒会活動を中心としていましたが、日本でのAAの普及と利用者のほとんどが単身のアルコール依存症者である状況から自助グループをAAに絞ることにしました。

1998(平成10)年頃までは、施設依存を断ち切り、地域生活を目指す視点から有期(6ヶ月から8ヶ月へと移行して行った)のプログラムを中心とした支援を行い、多いときには年間100名ほどの利用者の入退所が行われる状況となりました。この間には、就労自立を目指すことから、民間清掃会社に作業訓練に通うプログラム等も実施しましたが、社会的な不景気や受け入れ企業の事情により現在では行われていません。又、就労に困難が見込まれる利用者に対する支援として内職作業を取り入れるなど工夫を重ねてきました。

アルコール依存症からの回復を目指すことを中心としたプログラムを実施してきた期間(概ね開設から1998年頃まで)は、飲酒即退所というような対応や無断や希望退所などにより定員割れをすることがしばしばでしたが、東京都の補助金もあり財政的には支障をきたすこともなく運営されてきました。

1999(平成11)年、東京都が補助金の見直しを行うことが明らかとなったこと、救護施設として定員割れの状況を続けることは社会的な責任を果たしていることにならないことから、従来であれば受け入れを保留していたような利用者をも受け入れる(再入所の容認)ようにしました。その結果、従来のAAを中心とした回復プログラムでは対応が困難なケースが見え始めたため、利用者を集団的に支援する支援体制を個々の利用者のニーズにより個別的な支援をも行う体制へと組み替え、入所期間も個々に設定するようになりました。

2004(平成16)年より個別支援の充実を図るため全救協救護施設個別支援計画書の使用に取り組み始め、2006(平成18)年には救護施設個別支援計画書に基づく本格的な支援の提供に移行しました。また、2007(平成19)年1月には東館にフリースペース「ひまわり」を開設し、個別支援による新プログラム・日課を開始しました。そこで、救護施設個別支援計画書に基づく自立支援・生活支援の提供を行うために支援計画策定部門と計画に基づく支援の実施部門とに分け、個別支援の充実に取り組みましたが、利用者の重度高齢化による多様なニーズに応えることと、勤続年数の長い職員の退職による職員力の低下から、2部門に分けた体制を解消せざるを得ず、現在に至っています。

この個別支援計画に基づく自立支援・生活支援の提供への取り組みから、職員の組織的・個別的あり方が問われることになったため、2005(平成17)年秋より3ヵ年の経営改革推進事業(東京都補助金事業)に取り組みました。これにより、ミッション・バリュー・ビジョンを明確にし、職員の成長の指針となる「救世軍自省館成長のステージ」を整備しました。

2004(平成16)年の夏には東館が竣工し、トイレ・浴室が増設されたため、翌年6月(2005:平成17年)に開設来初めて女性利用者の受け入れを行いましたが、女性利用者には特有の問題があったことや思うように申し込みが行われないことから、2012(平成24)年4月最後の1名が退所した後、受け入れをしていません。

2008(平成20)年・2009(平成21)年の2ヵ年には、本館の大規模修繕工事を実施し、正面玄関の段差解消・居室の洋間化(全館ベッド対応となる)・各所の段差解消・電気設備の改修等を行いました。

2009(平成21)年、経営改革推進事業の成果として「成果領域とパフォーマンススコアカード、パフォーマンススコアカード実行計画」を完成させ、中長期計画を明確にしました。この実行計画に基づく第1次最優先課題への取り組みを行いつつ、第2次最優先課題への取り組みを検討しているところでしたが、2013(平成25)年度、実行計画の中間年であること及び実施状況が捗っていないことから、実行計画の見直し作業を行い、2014(平成26)年度からの新たな中期計画を策定し、取り組み始めました。

1976(昭和51)年竣工の本館建物について、2010(平成22)年度に耐震診断を実施したところ、耐震性に不備が確認されたため、2011・2012(平成23・24)年度で耐震改修工事を実施しました。

歴代施設長

初 代黒田 勲1977年02月01日~1981年07月31日
第2代浅香 融1981年08月01日~1982年03月31日
第3代岡澤 富保1982年04月01日~1989年06月16日
第4代徳永 忠則1989年06月16日~1995年06月06日
第5代中山 瑞雄1995年06月07日~1999年03月31日
第6代松井 勝郎1999年04月01日~2011年05月31日
第7代伊吹 正典2011年06月01日~2023年03月31日
第8代髙橋 正隆2023年04月01日~


施設外観